ティートーノス(古希: Τιθωνός, Tīthōnos, ラテン語: Tithonus)は、ギリシア神話に登場する人物である。長母音を省略してティトノスとも表記される。
イーリオス王ラーオメドーンの子で、プリアモス、ラムポス、クリュティオス、ヒケターオーン、ヘーシオネー、キラ、アステュオケーと兄弟。暁の女神エーオースの夫で、エーマティオーンとメムノーンの父。一説にアッサラコスと兄弟。
神話
女神との結婚
ティートーノスは美男子で、エーオースから熱烈に愛されたことで有名。神話によるとエーオースは彼をさらってアイティオピアーに連れて行き、夫とした。ホメーロスは、エーオースがティートーノスと眠るベッドから、毎朝、夜明けをもたらすために起き上がると詠っている。このことからティートーノスはしばしばエーオースの夫と呼ばれ、エーオースもまたティートーノスの妻と呼ばれた。
シケリアのディオドーロスは、ティートーノスはアイティオピアーに遠征し、エーオースにメムノーンを生ませたと述べている。
悲劇的結末
『ホメーロス風讃歌』によると、エーオースはゼウスに願い、ティートーノスを不死にしてもらった。ところが不老にしてもらうのを忘れたため、若々しい間は女神からの愛を享受していたが、老いが深まるとともにエーオースの足は遠のいて行った。それでも館の中で神々の飲食物で世話をしていたが、身体を動かすことが出来なくなったとき、ティートーノスを奥深い部屋に移して扉を閉ざし、2度と近づかなかった。しかしティートーノスは今も生きていて、その声は扉の向こうから聞こえてくるという。別の話によると老いさらばえたティートーノスは最後には声だけの存在となり、エーオースによってセミの姿に変えられたとされる。
なお、子供のうちエーマティオーンはヘーラクレースに殺された。またメムノーンはトロイア戦争でアイティオピアー勢を率いて戦った英雄である。
系図
その他のティートーノス
- ケパロス(ヘルセーとヘルメースの子)とエーオースの子で、パエトーンの父。彼はキュプロス王キニュラースの祖とされる。
脚注
注釈
出典
参考文献
- アポロドーロス『ギリシア神話』高津春繁訳、岩波文庫(1953年)
- オウィディウス『祭暦』高橋宏幸、国文社(1994年)
- ヒュギーヌス『ギリシャ神話集』松田治・青山照男訳、講談社学術文庫(2005年)
- ヘシオドス『神統記』廣川洋一訳、岩波文庫(1984年)
- ホメロス『イリアス(上・下)』松平千秋訳、岩波文庫(1992年)
- ホメーロス『ホメーロスの諸神讃歌』沓掛良彦訳、ちくま学芸文庫(2004年)
- 高津春繁『ギリシア・ローマ神話辞典』岩波書店(1960年)
- カール・ケレーニイ『ギリシアの神話 英雄の時代』植田兼義訳、中公文庫(1985年)
関連項目
- アンキーセース




