キンデサウルスあるいはチンデサウルス(学名 Chindesaurus)は、後期三畳紀、約2億1600万年前に現在のアメリカ南西部に生息していたヘレラサウルス科の獣脚類恐竜の属である。全長約2.4 mほどの小型で、二足歩行の肉食動物であった。

名前の由来

属名はナバホ語で「幽霊」または「悪霊」を意味するChindiと古代ギリシャ語で「トカゲ」を意味する"sauros" (σαυρος)から派生していて 、「幽霊トカゲ」もしくは「チンデポイント(Chinde Point)のトカゲ」という意味である。種小名bryansmalliは化石発見者のブライアン・スモールに献名されたものである。 キンデサウルスは2011年にR.A.ロングとP.A.マリーにより命名、記載され、タイプ種はChindesaurus bryansmalliである。この標本は発見時「Gertie」のニックネームがつけられ、大変な注目をあびた。

記載

キンデサウルスは現在までに5つの不完全な標本が知られている(もしカセオサウルス(Caseosaurus)がこの属に含まれるなら6つ)。これらの化石のうちタイプ標本であるPEFO 10395が最も完全で、単一の歯、断片的な頸椎、胴椎、いくつかの肋骨、2つの完全な仙椎、断片的な尾椎、骨盤、完全な状態の左側の大腿骨と右の断片的な大腿骨、断片的な右の脛骨、右の距骨から構成されている。他の標本はもっと不完全で、孤立した骨盤、大腿骨、椎骨から構成される。タイプ標本およびパラタイプは体長約2.4 mであった。体重は50 kgほどと推定されている。

分類

キンデサウルスの分類は困難であり、竜盤目の系統樹の基部の複数の異なる場所に配置されてきた。1985年に最初に発見された当時、最終的にキンデサウルスと命名されることになるこの化石標本は原竜脚類のものだと考えられた。10年後ロングとマリーにより命名、記載された際には、ヘレラサウルス科とみなされ、以後多くの古生物学者がこれに従った。2007年までに発表されたほとんどの系統解析ではヘレラサウルス科内に配置される結果を得ている。しかし、これに疑義を投げかけるものもあり、イルミス・ネスビットらは2007年の論文でキンデサウルスはおそらく基盤的な竜盤類であり、 複数の竜盤類の系統と共通する特徴を広範に渡りを持ち、これらのいかなる系統に属すとしても疑念が残るとした。また、 オリバー・ラウフト(de)(2003)ではキンデサウルスはbrevis shelf(腸骨の下部の突起)が内側に広がっていて、外側に広がるのが一般的な恐竜よりクルロタルシ類のものに似ているとしている。

テキサス州のテコヴァス累層(en)で発見され、最初はキンデサウルスのものとされた標本の1つが後に独自の属の種カセオサウルス・クロスビエンシス(Caseosaurus crosbyensis)とされている 。後の研究ではこの属の分離は誤りであり、C. bryansmalli C. crosbyensisは同種であるとされている。ネスビット、イルミス、パーカーは2007年の論文でこれに同意し、カセオサウルスをキンデサウルスから分離する理由はほとんど無く、両者は他の類似種には見られない固有の特徴を持っているとした。さらにネスビットらは両者のいずれの違いも大きさの違いに由来するものである可能性を指摘した。しかし、両者の標本とも断片的であり、シノニムであるかどうか正式に判断することはできない。

以下のクラドグラムはHans-Dieter Sues, Sterling J. Nesbitt, David S Berman and Amy C. Henrici(2011)の系統解析に従ったもので、ヘレラサウルス科を含む獣脚類内でのキンデサウルスの位置を示したものである。

記相

記相(diagnosis)とはある生物(もしくは分類群)を全てのほかの生物から正確に識別するための解剖学的特徴である。記相となる特徴には固有派生形質(Autapomorphy)も含まれるがそれが全てではない。固有派生形質は生物(もしくは分類群)に固有の解剖学的特徴である。

Nesbitt et al. (2007)に従えば、キンデサウルスは以下の特徴により識別される。

  • 後寛骨臼突起に三角形のしわがある。
  • 近位の脛骨の顆間溝が深く内側に位置している。
  • 脛骨の近位の腓骨側の顆の後の縁が近位から見て真直ぐ。
  • 距骨の腹側に裂け目がある。

古生態学

発見地

キンデサウルスのホロタイプ標本であるPEFO 10395は部分骨格であり、アリゾナ州アパッチ郡のシンレ累層(en)の化石の森国立公園部層で発見された。発見者ブライアン・スモールは1895年に三畳紀後期ノリアン期(2億2800万年前-2億800万年前)に堆積した青色泥岩の中からこの化石を発見した 。 標本PEFO 4849は1つの胴椎でこの属のものとされている。この標本は化石の森国立公園部層上部の別の場所のノリアン期の堆積物の中から収集された。 標本PEFO 33982は9つの椎骨、腸骨、大腿骨の近位の断片などで構成され、同じく化石の森国立公園部層上部のノリアン期の堆積物から収集された。 これらの2つの標本はカリフォルニア州バークレーにあるカリフォルニア大学古生物学博物館(en)に収蔵されている。

標本NMMNH P16656とNMMNH P17325はニューメキシコ州のブル・キャニオン累層の三畳紀後期、ノリアン期の堆積物から発見された。これら2つの標本はキンデサウルスのものであるかどうか現在では疑問視されている 。ニューメキシコ州アルバカーキのニューメキシコ自然史・科学博物館(en)に収蔵されている。

2006年、この属のものとされる新たな標本がニューメキシコ州のシンレ累層、化石の森国立公園部層のヘイデン発掘地の灰緑シルト岩から発見された。 また近位の大腿骨である他の標本TMM 31100-523が発見されている。発見地はテキサス州のコロラドシティ累層で、三畳紀後期カルニアン期(2億3500万年前-2億2800万年前)の泥岩から発見された。現在はテキサス州オースティンのテキサス鉱物博物館(en)に収蔵されている。

動物相と習性

化石発見地であるシンレ累層上部化石の森国立公園部層は古代の氾濫原であり、植竜類、ラウイスクス類、偽鰐類、その他の主竜類、その他の四足動物などキンデサウルスや近縁のコエロフィシスと食料をめぐって競合する生物が生息していた。この古環境ではハイギョと二枚貝も豊富であった。ラウイスクス類のサウロスクスがキンデサウルスの一番の脅威であったかもしれない。

参照

外部リンク

  • Image of Chindesaurus by Rob Gay



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